Data/妖人奇人館/13倒錯の性
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開始行:
一口に異常とか倒錯とかいうけれども、セックスの領域で、...
康と病気の区別くらい、明確にするのに困難なものはない。最...
なかには、「倒錯」という言葉を使うのを慎重に避けている者...
ある。
肉体的な病気なら、話は簡単なのである。つまり、痛みがあ...
定の器官の能力が衰えて、使いものにならなくなったとかいっ...
っきり病気だと認定して差支えないわけである。ところが、セ...
そう簡単にはいかない。病気とか倒錯とかいったって、要する...
の問題[趣味〜問題まで傍点]にすぎないからである。
たとえは、女の下着をあつめて喜ぶフェティシストがいたと...
下着を盗めば犯罪であるが、ただ下着をあつめて、アパートの...
こっそり眺めて楽しんでいる分には、この男の行動には、社会...
ようなところは全くないわけである。いったい、この男の性欲...
錯とか呼んで、矯正しなければならない理由があるだろうか。
いわゆる性的倒錯と呼ばれているもののなかには、スコプト...
症)とかエギジビショニズム (露出症)とかいったものも含...
は、ほかならぬ私たち自身の経験に照らしてみて、健康な普通...
て多かれ少なかれ、こういった欲望をもっていることを知って...
エスカレーターや歩道橋の下から、ミニスカートの女性の下着...
べつに誰の迷惑になるわけのものでもなし、そういう行為は、...
大目に見られているのである。わざわざのぞいて見れば軽犯罪...
まうものは仕方がない。「眼の保養」などという言葉もあるく...
どんなに異常な、どんなに残虐な、どんなにグロテスクな性...
たちが頭のなかで空想するだけなら自由だし、想像力のはたら...
たちが理解し得ないような、いわゆる性的倒錯なるものは、一...
ないかとさえ私は思う。サディズム、マゾヒズムは申すまでも...
ィリア(屍体愛好)だって、ゾーエラスティア(獣姦)だって...
ア(糞便嗜好)だって、決して私たちの想像を絶した世界の出...
ずだ。私たちは、一歩間違えば誰でも犯罪者になる可能性があ...
に、一歩間違えば誰でも「性的倒錯者」になる可能性がある、...
ろう。
最近の新聞によると、アメリカで、ホモセクシュアルの男女...
「われわれの権利を認めよ」と大善して、デモ行進をやったそ...
教徒的倫理観の支配的であった昔ならば、とても考えられなか...
これには社会情勢の変化も関係していようが、また今世紀にお...
科学の飛羅的な発達も、無関係ではあるまい。スエーデンのラ...
タム博士のように、「あらゆる性倒錯という偏見を打破せよ。...
法律をさらに緩和せよ」と叫ぶ学者も出てきていをくらいなの...
要するに、性の世界における異常と正常、病気と健康のあい...
した境界線を引くことは不可能なのである。性的倒錯の世界は...
ない別世界ではなく、私たちのすぐ隣の[すぐ〜隣のまで傍点]...
のである、ということを頭に入れておいていただいて、私は今...
錯」という言葉を便宜的に使っていこうと思うのである。
以前、新聞の三面記事に小さく出ていた、きわめて興味ぶか...
のを思い出す。ある若い自衛隊員が、深夜、ひとりで首吊り遊...
ぅちに、誤って本当に首が締って、死にそうになっているとこ...
という事件である。その男の告白によると、映画を見て、まね...
くなったのだそうである。この新聞記事を読んだ私たちは、ほ...
この奇妙な事件のマゾヒスティックな臭い(男が自衛隊員であ...
に象徴的ではないか!)を嗅ぎつけたのであるが、世間には、...
ならなかったようである。たぶん、首を吊っていた本人も、自...
ィックな性格を意識してはいなかったであろう。自分でも気が...
錯者がふえてきているのが、現代の欲求不満だらけの大衆社会...
ろうか、と私は考える。
こんな例は、めったにあるものではなかろうが、一般に新聞...
して片づけている事件のなかにも、よくよく注意してしらべて...
倒錯的な、疑わしい点があるのに気がつくことがあるものであ...
自衛隊員の場合によく似た例が、ごく最近のアメリカの新聞に...
アメリカの西部のある町で、ひとりの少年が、オートバイ乗...
をかけ、犬の首輪をぴっちり首にはめて、全裸で死んでいると...
この場合も、明らかに首吊り遊びのヴァリエーションであるに...
らにここには、サングラスとか革の首輪とかいった、奇妙な小...
示されるフェティシズムの要素が混っていることふ、容易に読...
ちなみに、有名な阿部定事件も、男女が肉体交渉の最中、ふざ...
り離したりしているうちに、誤って本当に殺してしまったとい...
ついでにもうひとつ、マゾヒストの首吊り事件の古典的な例...
こう。
フランス王家と関係のふかい大貴族で、「最後のコンデ公」...
イ・ド・ブルボンが、一八三〇年夏のある朝、サン・ルーの城...
掛金にぶら下がって、全裸で死んでいるところを発見されたと...
死んだとき、この大貴族は七十歳の老齢であった。彼には、イ...
てきて、自分の家臣であるフシェール男爵と結婚させていた、...
若い愛人があり、彼女も事件に関係があるのではないかと疑わ...
命令により、このスキャンダルは揉み消されてしまった。しか...
ばらの噂では、この老人は札つきのマゾヒストだったのである...
早くて有名で、フランス革命のときには、亡命貴族の軍隊を指...
ともある男だった。
マゾヒズムとはかなり趣が違うけれども、あの有名なフラン...
ラ.ベルナールの奇怪な趣味について、次にご紹介しよう。こ...
リア(屍体愛好)とフェティシズムとの結びついたもので、や...
臭いが濃厚である。
サラ・ベルナールの私生活を暴露した、彼女の同僚の女優マ...
エの語るところによると、この大女優は、葬式や屍体に関係あ...
で、パリの医学校の付近をしらみつぷしに歩きまわって、一ダ...
間の頭蓋骨を手に入れ、これを自分の部屋に飾っておいたとい...
ではなく、わざわざ葬儀屋に注文して、内部に繹子の布地を張...
の豪著な棺をつくらせて、自分がそのなかに入り、死んだつも...
のを好んだという。
初めてサラが棺のなかに横たわって、男友達を自宅に呼んだ...
らずに呼ばれてきた連中は、ぎょっとして戸口に立ちすくんで...
は薄暗く、蝋燭の明りがついていて、棺のなかをのぞくと、黒...
ョンの上に、真白な着物を着たサラが、かたく目をつぶり、身...
るで本当の死人のように蒼白な顔をして、横たわっているので...
ら、メイキャップはお手のものだ。
こうして、しばらくすると、サラは復活したラザロのように...
立ちあがり、恐怖の表情を浮べて見守っている男たちを眺めて...
すのだった。それから、「誰かあたしと一緒に、この棺のなか...
はいない?」と男友達に誘いかけるのだったが、さすがに誰も...
うと言い出す者はいなかった。すると彼女は、大いにお冠りで...
あんた方はもう、あたしを愛していないのね?」と言い出す始...
後に、勇気のある男が、彼女と一緒に棺のなかに入ってはみた...
趣向のベッドでは、彼の欲望の焔はそれほど激しく燃えるわけ...
たという話である。
およそ性的倒錯のなかでも、フェティシズムくらい、広範な...
のはあるまい。サラ・ベルナールの場合は、ネクロ・フェティ...
係のある表象や物体を愛すること)の極端な一例であろうが、...
エティシズムには、肉体の一部や衣服や臭いのような、少なく...
に関係のあるものを愛好することから始まって、機械や物体の...
な無機物、あるいはそれらの観念を愛好することまで、じつに...
含しているのである。毛皮が好きな人もあれば、ゴムが好きな...
好きな人もあれば、ガラス (たとえは医療器械)や鋼鉄(た...
な人もある。どんなものにでも、電気のように、性的欲望は充...
病理学的なフェティッシュとして、潅腸器を好む人がもっと...
ぷん、この医療器具が幼児期の体験と密接に結びついているた...
かしクリフォード・アレンの報告している例は、もっと面白い...
男は、ゴム製品のフェティシストで、薬屋から薬屋へと歩きま...
店員から、赤ん坊に吸わせるゴムの乳首を買うのが何よりの快...
ある。要するに、乳房コンプレックスの変形で、この幼児性格...
の女店員から、ゴムの乳首を自分の口のなかへ入れてもらうと...
想をいだいていたのであろう。
ぴかぴか光った鋼鉄の剣や武器も、サディストやマゾヒスト...
ュになりやすいが、元来、フェティシストは物体そのものを愛...
見るところまでは進まないのが通例であるようだ。それでも、...
報告している、フランスの青年ウージェーヌ某の話は、奇怪な...
ジー(人肉嗜食)の欲望とマゾヒズムの自己破壊の欲望とが結...
なる倒錯の範疇に分類してよいか迷ってしまうような、ふしぎ...
一八九一年、パリのおまわりさんが、公園のベンチにすわっ...
労務者凰の若い男を見つけて、近づいてみると、あっと驚いた...
年は鋏で自分の左腕の肉を切り取って、陶然たる面持で、その...
をむしゃむしゃ食っていたのである。
まあ、自分で自分の肉を食うのだから、べつに犯罪というわ...
人の勝手といえば勝手かもしれないが、しかし異常な事件であ...
あるまい。
警察へ連れてきて、事情をきいてみると、この青年の頭のな...
当時の少年の頃から、奇妙な固定観念のような甘美な妄想がこ...
のだった。つまり、彼は色の白い肌のきれいな若い娘を見ると...
一部分を噛み切って、食いたくてたまらなくなるのだそうであ...
肌が彼のフェティッシュだったわけだ。そこで、刃物屋で大き...
て、街をうろつき、自分の理想の娘を物色していたが、なかな...
い。とうとう歩き疲れて、公園のベンチにすわり、自分の腕の...
そうな、いちばん白い部分を鋏で切り取って、これを頭のなか...
想して、食うことを思いつき、実行していたのだという。まっ...
男である。
自己破壊の欲望は、フロイトのいわゆる道徳的マゾヒズム、...
無意識的な罪悪感をもっている人間が、罰への欲求によって動...
のマゾヒズムであるが、この青年の場合には、どうやらこの定...
ないようである。むしろサディズムとフェティシズムが、屈折...
向った場合と見るべきだろう。
クラフト・エビング以来、性科学者によって分類されてきた...
今まで名前を挙げなかったものには、オナニズム、同性愛、ト...
ィズム (衣裳交換)、ペドフィリア (少年愛)、ジェロン...
ピグマリオニズム (偶像愛)、ウロラグニア (放尿と結び...
プロラグニア (排泄物と結びついた性的満足)、クレプトラ...
と結びついた性的満足)、オスフレジオラグニア (体臭によ...
的満足)、ピロラグニア (放火によって惹起される性的満足...
(口と女性性器との接触)、フェラチオ (口と男性性器との...
呼ばれているものがある。
これらのうち、同性愛やサド・マゾヒズムについては、すで...
語りつくされているように思われるので、私は、とくに私の関...
りの変ったネクロフィル (屍体愛好者) の例をお話したい...
それはフランスのアレクシス・エポラール博士によってくわ...
ヴィクトル・アルディッソンという驚くべき男の場合である。...
は新聞で「ミュイの吸血鬼」と呼ばれ、ピエルフウの精神病院...
墓あばきの常習犯であったが、すこぶるおとなしい男で、医者...
答えたので、医者たちも彼には好感をもっていたらしい。
三歳の幼女から六十歳の老婆までの女の屍体を発掘し、しば...
で運んできたが、直接的にも間接的にも、これに性的な凌辱を...
度もなかった。十三歳の少女のミイラ化した首を、彼は非常に...
これを自分の「許嫁《いいなずけ》」と呼び、十字架だとか、...
か、蝋燭だとかいった奇妙な収集品のなかに加えて保存してい...
警官に発見されたとき、彼の家の納屋の藁の上には、いちば...
てきた三歳の幼児の屍体が、半ば腐りかけて置いてあったが、...
い帽子がかぷせてあったという。ちょっと、ほほえましいよう...
ろうか。
アルディッソンの職業は墓掘り人足であったから、屍体を手...
合がよかったわけである。ありとあらゆる階層、ありとあらゆ...
彼は自分のものにした。といっても、前にも書いたように、性...
まったく行わず、ただ、ときどき愛撫するだけであった。「三...
で、どんな女でも自分は満足だった」とみずから語っている。
ところで、おもしろいのは、たった一度だけ、彼が掘り出し...
棄ててしまったことがあった。その屍体には、脚が一本しかな...
る。少女のふくらはぎが、彼にはいちばん魅力だったのだ。ほ...
の脚が、いわばアル・ディッソンのフェティッシュだったわけ...
彼の美学は、あの『ロリータ』の作者のそれと同じだったので...
で、ふくらはぎの美しい少女が自分のまわりを飛びまわってい...
しば彼は見たという。
たしかにアルディッソンは知能が低く、字も満足に書けない...
が、一日中、熱心にジュール・ヴエルヌの冒険小説を読んだり...
楽に耳を傾けていたりしたというから、また一風変った趣味の...
ある。納屋のなかで、少女の屍体を相手に、彼はいろんなこと...
た。
犯罪史上に名高いネクロフィルには、墓場から屍体をあばき...
ばかりでなく、ばらばらに寸断したというベルトラン軍曹など...
ロ・サディズムの傾向を示す者が多いように思えるが、このア...
場合だけは特別で、なにかひどく幼児的であり、あたかもエド...
ポーのノスタルジアを稚拙に模倣したかのごとき印象をあたえ...
け興味をひかれる所以である。
終了行:
一口に異常とか倒錯とかいうけれども、セックスの領域で、...
康と病気の区別くらい、明確にするのに困難なものはない。最...
なかには、「倒錯」という言葉を使うのを慎重に避けている者...
ある。
肉体的な病気なら、話は簡単なのである。つまり、痛みがあ...
定の器官の能力が衰えて、使いものにならなくなったとかいっ...
っきり病気だと認定して差支えないわけである。ところが、セ...
そう簡単にはいかない。病気とか倒錯とかいったって、要する...
の問題[趣味〜問題まで傍点]にすぎないからである。
たとえは、女の下着をあつめて喜ぶフェティシストがいたと...
下着を盗めば犯罪であるが、ただ下着をあつめて、アパートの...
こっそり眺めて楽しんでいる分には、この男の行動には、社会...
ようなところは全くないわけである。いったい、この男の性欲...
錯とか呼んで、矯正しなければならない理由があるだろうか。
いわゆる性的倒錯と呼ばれているもののなかには、スコプト...
症)とかエギジビショニズム (露出症)とかいったものも含...
は、ほかならぬ私たち自身の経験に照らしてみて、健康な普通...
て多かれ少なかれ、こういった欲望をもっていることを知って...
エスカレーターや歩道橋の下から、ミニスカートの女性の下着...
べつに誰の迷惑になるわけのものでもなし、そういう行為は、...
大目に見られているのである。わざわざのぞいて見れば軽犯罪...
まうものは仕方がない。「眼の保養」などという言葉もあるく...
どんなに異常な、どんなに残虐な、どんなにグロテスクな性...
たちが頭のなかで空想するだけなら自由だし、想像力のはたら...
たちが理解し得ないような、いわゆる性的倒錯なるものは、一...
ないかとさえ私は思う。サディズム、マゾヒズムは申すまでも...
ィリア(屍体愛好)だって、ゾーエラスティア(獣姦)だって...
ア(糞便嗜好)だって、決して私たちの想像を絶した世界の出...
ずだ。私たちは、一歩間違えば誰でも犯罪者になる可能性があ...
に、一歩間違えば誰でも「性的倒錯者」になる可能性がある、...
ろう。
最近の新聞によると、アメリカで、ホモセクシュアルの男女...
「われわれの権利を認めよ」と大善して、デモ行進をやったそ...
教徒的倫理観の支配的であった昔ならば、とても考えられなか...
これには社会情勢の変化も関係していようが、また今世紀にお...
科学の飛羅的な発達も、無関係ではあるまい。スエーデンのラ...
タム博士のように、「あらゆる性倒錯という偏見を打破せよ。...
法律をさらに緩和せよ」と叫ぶ学者も出てきていをくらいなの...
要するに、性の世界における異常と正常、病気と健康のあい...
した境界線を引くことは不可能なのである。性的倒錯の世界は...
ない別世界ではなく、私たちのすぐ隣の[すぐ〜隣のまで傍点]...
のである、ということを頭に入れておいていただいて、私は今...
錯」という言葉を便宜的に使っていこうと思うのである。
以前、新聞の三面記事に小さく出ていた、きわめて興味ぶか...
のを思い出す。ある若い自衛隊員が、深夜、ひとりで首吊り遊...
ぅちに、誤って本当に首が締って、死にそうになっているとこ...
という事件である。その男の告白によると、映画を見て、まね...
くなったのだそうである。この新聞記事を読んだ私たちは、ほ...
この奇妙な事件のマゾヒスティックな臭い(男が自衛隊員であ...
に象徴的ではないか!)を嗅ぎつけたのであるが、世間には、...
ならなかったようである。たぶん、首を吊っていた本人も、自...
ィックな性格を意識してはいなかったであろう。自分でも気が...
錯者がふえてきているのが、現代の欲求不満だらけの大衆社会...
ろうか、と私は考える。
こんな例は、めったにあるものではなかろうが、一般に新聞...
して片づけている事件のなかにも、よくよく注意してしらべて...
倒錯的な、疑わしい点があるのに気がつくことがあるものであ...
自衛隊員の場合によく似た例が、ごく最近のアメリカの新聞に...
アメリカの西部のある町で、ひとりの少年が、オートバイ乗...
をかけ、犬の首輪をぴっちり首にはめて、全裸で死んでいると...
この場合も、明らかに首吊り遊びのヴァリエーションであるに...
らにここには、サングラスとか革の首輪とかいった、奇妙な小...
示されるフェティシズムの要素が混っていることふ、容易に読...
ちなみに、有名な阿部定事件も、男女が肉体交渉の最中、ふざ...
り離したりしているうちに、誤って本当に殺してしまったとい...
ついでにもうひとつ、マゾヒストの首吊り事件の古典的な例...
こう。
フランス王家と関係のふかい大貴族で、「最後のコンデ公」...
イ・ド・ブルボンが、一八三〇年夏のある朝、サン・ルーの城...
掛金にぶら下がって、全裸で死んでいるところを発見されたと...
死んだとき、この大貴族は七十歳の老齢であった。彼には、イ...
てきて、自分の家臣であるフシェール男爵と結婚させていた、...
若い愛人があり、彼女も事件に関係があるのではないかと疑わ...
命令により、このスキャンダルは揉み消されてしまった。しか...
ばらの噂では、この老人は札つきのマゾヒストだったのである...
早くて有名で、フランス革命のときには、亡命貴族の軍隊を指...
ともある男だった。
マゾヒズムとはかなり趣が違うけれども、あの有名なフラン...
ラ.ベルナールの奇怪な趣味について、次にご紹介しよう。こ...
リア(屍体愛好)とフェティシズムとの結びついたもので、や...
臭いが濃厚である。
サラ・ベルナールの私生活を暴露した、彼女の同僚の女優マ...
エの語るところによると、この大女優は、葬式や屍体に関係あ...
で、パリの医学校の付近をしらみつぷしに歩きまわって、一ダ...
間の頭蓋骨を手に入れ、これを自分の部屋に飾っておいたとい...
ではなく、わざわざ葬儀屋に注文して、内部に繹子の布地を張...
の豪著な棺をつくらせて、自分がそのなかに入り、死んだつも...
のを好んだという。
初めてサラが棺のなかに横たわって、男友達を自宅に呼んだ...
らずに呼ばれてきた連中は、ぎょっとして戸口に立ちすくんで...
は薄暗く、蝋燭の明りがついていて、棺のなかをのぞくと、黒...
ョンの上に、真白な着物を着たサラが、かたく目をつぶり、身...
るで本当の死人のように蒼白な顔をして、横たわっているので...
ら、メイキャップはお手のものだ。
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立ちあがり、恐怖の表情を浮べて見守っている男たちを眺めて...
すのだった。それから、「誰かあたしと一緒に、この棺のなか...
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うと言い出す者はいなかった。すると彼女は、大いにお冠りで...
あんた方はもう、あたしを愛していないのね?」と言い出す始...
後に、勇気のある男が、彼女と一緒に棺のなかに入ってはみた...
趣向のベッドでは、彼の欲望の焔はそれほど激しく燃えるわけ...
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およそ性的倒錯のなかでも、フェティシズムくらい、広範な...
のはあるまい。サラ・ベルナールの場合は、ネクロ・フェティ...
係のある表象や物体を愛すること)の極端な一例であろうが、...
エティシズムには、肉体の一部や衣服や臭いのような、少なく...
に関係のあるものを愛好することから始まって、機械や物体の...
な無機物、あるいはそれらの観念を愛好することまで、じつに...
含しているのである。毛皮が好きな人もあれば、ゴムが好きな...
好きな人もあれば、ガラス (たとえは医療器械)や鋼鉄(た...
な人もある。どんなものにでも、電気のように、性的欲望は充...
病理学的なフェティッシュとして、潅腸器を好む人がもっと...
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ュになりやすいが、元来、フェティシストは物体そのものを愛...
見るところまでは進まないのが通例であるようだ。それでも、...
報告している、フランスの青年ウージェーヌ某の話は、奇怪な...
ジー(人肉嗜食)の欲望とマゾヒズムの自己破壊の欲望とが結...
なる倒錯の範疇に分類してよいか迷ってしまうような、ふしぎ...
一八九一年、パリのおまわりさんが、公園のベンチにすわっ...
労務者凰の若い男を見つけて、近づいてみると、あっと驚いた...
年は鋏で自分の左腕の肉を切り取って、陶然たる面持で、その...
をむしゃむしゃ食っていたのである。
まあ、自分で自分の肉を食うのだから、べつに犯罪というわ...
人の勝手といえば勝手かもしれないが、しかし異常な事件であ...
あるまい。
警察へ連れてきて、事情をきいてみると、この青年の頭のな...
当時の少年の頃から、奇妙な固定観念のような甘美な妄想がこ...
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一部分を噛み切って、食いたくてたまらなくなるのだそうであ...
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自己破壊の欲望は、フロイトのいわゆる道徳的マゾヒズム、...
無意識的な罪悪感をもっている人間が、罰への欲求によって動...
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ないようである。むしろサディズムとフェティシズムが、屈折...
向った場合と見るべきだろう。
クラフト・エビング以来、性科学者によって分類されてきた...
今まで名前を挙げなかったものには、オナニズム、同性愛、ト...
ィズム (衣裳交換)、ペドフィリア (少年愛)、ジェロン...
ピグマリオニズム (偶像愛)、ウロラグニア (放尿と結び...
プロラグニア (排泄物と結びついた性的満足)、クレプトラ...
と結びついた性的満足)、オスフレジオラグニア (体臭によ...
的満足)、ピロラグニア (放火によって惹起される性的満足...
(口と女性性器との接触)、フェラチオ (口と男性性器との...
呼ばれているものがある。
これらのうち、同性愛やサド・マゾヒズムについては、すで...
語りつくされているように思われるので、私は、とくに私の関...
りの変ったネクロフィル (屍体愛好者) の例をお話したい...
それはフランスのアレクシス・エポラール博士によってくわ...
ヴィクトル・アルディッソンという驚くべき男の場合である。...
は新聞で「ミュイの吸血鬼」と呼ばれ、ピエルフウの精神病院...
墓あばきの常習犯であったが、すこぶるおとなしい男で、医者...
答えたので、医者たちも彼には好感をもっていたらしい。
三歳の幼女から六十歳の老婆までの女の屍体を発掘し、しば...
で運んできたが、直接的にも間接的にも、これに性的な凌辱を...
度もなかった。十三歳の少女のミイラ化した首を、彼は非常に...
これを自分の「許嫁《いいなずけ》」と呼び、十字架だとか、...
か、蝋燭だとかいった奇妙な収集品のなかに加えて保存してい...
警官に発見されたとき、彼の家の納屋の藁の上には、いちば...
てきた三歳の幼児の屍体が、半ば腐りかけて置いてあったが、...
い帽子がかぷせてあったという。ちょっと、ほほえましいよう...
ろうか。
アルディッソンの職業は墓掘り人足であったから、屍体を手...
合がよかったわけである。ありとあらゆる階層、ありとあらゆ...
彼は自分のものにした。といっても、前にも書いたように、性...
まったく行わず、ただ、ときどき愛撫するだけであった。「三...
で、どんな女でも自分は満足だった」とみずから語っている。
ところで、おもしろいのは、たった一度だけ、彼が掘り出し...
棄ててしまったことがあった。その屍体には、脚が一本しかな...
る。少女のふくらはぎが、彼にはいちばん魅力だったのだ。ほ...
の脚が、いわばアル・ディッソンのフェティッシュだったわけ...
彼の美学は、あの『ロリータ』の作者のそれと同じだったので...
で、ふくらはぎの美しい少女が自分のまわりを飛びまわってい...
しば彼は見たという。
たしかにアルディッソンは知能が低く、字も満足に書けない...
が、一日中、熱心にジュール・ヴエルヌの冒険小説を読んだり...
楽に耳を傾けていたりしたというから、また一風変った趣味の...
ある。納屋のなかで、少女の屍体を相手に、彼はいろんなこと...
た。
犯罪史上に名高いネクロフィルには、墓場から屍体をあばき...
ばかりでなく、ばらばらに寸断したというベルトラン軍曹など...
ロ・サディズムの傾向を示す者が多いように思えるが、このア...
場合だけは特別で、なにかひどく幼児的であり、あたかもエド...
ポーのノスタルジアを稚拙に模倣したかのごとき印象をあたえ...
け興味をひかれる所以である。
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