[[本/日経サイエンス201302]]

Google効果

交換記憶:自分が覚えていない記憶を他者に委ねて、組織全体の記憶を増やす。過去は家族や同僚、コミュニティで行われていた。が、今はGoogleやWikipediaが対象となっている。Googleを日常的に使っている人間がその知識を自分の記憶と勘違いしているという面白い実験結果があった。

他の人に聞いた記憶と端末で調べた知識とで感覚が異なるのは体感的に分かる。しかし、だからといって、Googleによる知識と人間との交換記憶に実は差はない。どちらも自分の記憶を外部に依存しているのだ。

記憶を外部に保存することは人間が知的な生命体として存在する基本だ。

人類は言葉や文字によって経験や知識を後代に残すことができるようになった。だから、科学が発達したのだ。どんな天才も、先達の積み上げた遺産がなければその高みに達することはできない。誤ったものであっても、何かがあったからそれを足がかりにできたのだ。

個人が宇宙の観測をする時に手作りの望遠鏡から始めなければならなかったらと考えればわかる。ガリレオだって、それ以前のガラスの製法などはそれ以前に存在していた技術から得たのだ。

また、よく考えるのだが、毒のある自然の動植物に関する知識を個人で選ぶことは命がけだ。だれか、実際に食べて死んだ人のことを伝えることで人間はその危険を回避できるようになった。

その延長上であると考えればインターネットによる記憶の外部化は必然だ。そして、その中から効率的に目的の情報にたどり着く能力は重要だ。それは、一度あった人の顔を忘れない経営者(政治家、ボーイ)さんの能力と同様に価値がある。

重要なのは、それを認識しておくこととネットへの記憶のフィードバックだろう。


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