【営業プロセス管理のポイント(1)】
 営業現場を結果管理からプロセス管理に変える
UFJ総合研究所 経営戦略部(東京) チーフコンサルタント 東條 恵明
◆イテローに見るプロセス管理
 今シーズンも、昨年以上の調子の良さを感
じさせる大リーグのイチロー。彼は好調時も
スランプの時も、打率や安打数といった結果
については多くを語ろうとしない。むしろ、
彼の関心は「構えて、振る」という至極単純
な打撃のプロセス(打撃フォーム)にある。
日々の打撃成績に一喜一憂するのではなく、
その日の反省点はその日のうちに整理・確認
し、常に打撃プロセスを修正しているのだ。
 実際、オープン戦以来の好成績も、スタン
スを狭めてバットのヘッドを寝かせるという、
昨年後半戦で修正した新フォームが大いに関
係しているらしい。
 まさに、望ましい結果は望ましいプロセス
に伴うことを熟知した真のプロだと恐れ入る。
◆営業における結果管理とプロセス管理
 ところが、同じプロでも営業のプロの現場
に目を転じると、打てた・打てないという結
果管理一辺倒の企業が少なくない。結果管理
とは、売れたか・売れなかったか、販売目標
を達成したか・未達だったか、というような
「できる・できない」の管理のことである。
 営業部門が結果管理に陥っているかどうか
は、売れない時の上司と部下のやり取りを聞
くと、おおよそ分かるものである。「こんな
数字でどうするんだ」「この見込み案件はも
のになるのか」という類の、結果に対する詰
問や叱咤からは、凡打に倒れた原因も今後の
修正点も見えてこない。
 あくまでも管理の目線は、結果ではなく、
結果をもたらした業務プロセスにあるべきだ。
 業種による違いはあるものの、見込み客の
リストアップー接触とニーズ・顧客課題の発
見一提案一契約条件の充足(障害の解消)一
クロージング、というような営業プロセスを
紐解き、なぜそのような結果になったのか、
修正点を明確にしていくことが重要である。
◆“見える化”と3層のPDCAに取り組む
 もし貴社の営業部門が、全幅の信頼のおけ
る腕利きの担当者揃いであれば、プロセス管
理は恐らく不要である。しかし「営業担当者が
何をしているのかよく見えない」「担当者の
実績のバラツキが大きい」のであれば、組織と
して効率的な営業活動を推進するために、営業
プロセスの‘見える化”と PDCA(nan,Do,
Chedこ,Action)に取り組むことが有効である。
 プロセスの“見える化”とは、これまでに
成功した複数の営業活動を見比べ、有効な営
業活動のステップ(活動項目)と、各段階の
目的やチェックポイントを全員で合意してお
くことである。どんなに足繁く見込み客を訪
問しても、事細かに営業日報を書き込んでも、
クロージングに至る有効なステップを一歩・
歩進んでいないのであれぱ、最終的に安打に
結びつく可能性は大きく低下するだろう。
 基本プロセスが定まったら、収益数字、プ
ロセス、行動の3層でPDCAを行う。
 多くの企業では、売上などの収益計画・実
績だけに関心が集中し過ぎて、その裏付けと
なる基本プロセスの進捗管理がすっぽり抜け
落ちていたり、訪問件数などの行動管理と基
本プロセスの管理がバラバラになっているケ
ースが多い。ここで重要なことは、収益数字
とプロセスと行動の一体的な管理である。
 つまり、収益計画を出発点に、必要なプロ
セスと行動に分解して計画を立案(P)し、
実際の行動(D)後に、行動とプロセスの進
捗状況をチェック・修正行動(CA)するサ
イクルをつくるのである。
 見込み客リストの数は十分にあるか、顧客
に提案する切り口が用意できているか、キー
マンに会えているか‥…・。営業プロセスの要
所要所に設けられたチェックポイントが、営
業担当者の行動でしっかりと裏打ちされてい
れば、必ずや、打率や安打数という結果とな
って現れるはずである。


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Last-modified: 2008-06-09 (月) 14:14:48