トレッドミル走法

 ジムに通うようになって初めて、本格的なトレッドミルに乗った。

 「トレッドミルは同じ速度でも外を走るのより負荷が少ない」というのを読んでいたが、色々と違うことがわかった。

 まず第一に、暑い。この暑さは社宅のローラーでMTBを漕ぐのと同じ性質の暑さだ。自転車の速度なら当然だが、ランニングでも風を浴びてることで放熱していることがよく分かる。エアコンの設定温度の問題もあるが、それとは別だ。からだで暖められた空気が体にまとわりつく暑さがある。なので、続けるのが難しい。体が疲れる前に暑さでバテる。

 第二は、心理的な厳しさ。この厳しさには、退屈さと同じペースを強いられる辛さがある。退屈なのは誰でも想像がつくだろうし予想も付いていた。予想外にキツく感じるのは同じペースを続けることだ。外だとペースは自分で決めるし外的要因によるバラツキもある。信号待ちやちょっとした下り坂で負荷が下がったり、上りきつければ速度を落としたりしている。これらの刺激がリフレッシュになるのだろう。トレッドミルには一切変化というか遊びというか、心理的な余裕を生み出す隙間のようなものがない。これがプレッシャーとなって10km/h以上の速度で30分以上連続で走ることは自分には難しい。外なら30分はウォームアップに近い距離だし、その距離を平均6分で走っても全然疲れないのに。

 さらに、そのような余裕のない状態なので、目標とする5分30秒/分のペース(速度でだいたい11km/h)でのペース練習はできない。まして、インターバルで追い込むようなスピードで走ることは自分には困難だ。

 第三は、第二にも通じるが、フォームが作れないこと。やはり、自分で進むのとベルトコンベアーの上でベルトの動きに送れないようにするだけとは違う。極端な話、トレッドミルでは推進力を生む必要はない。送れないように足を出せばベルトが勝手に動いてくれる。外では必要となる体重を前に送り出すためのキックは必要はない。なので、外で必要となるフォームとトレッドミルで楽に走るためのフォームとは異なる。逆に、外で必要となるフォームを使おうとすると不自然になってしまう。「地面が勝手に動く上で静止するよう走る」という不自然な状況なのだから当然ともいえる。

 第四は、自分がまっすぐ走れていないことを再認識させてくれた。これは、障害物だらけの屋外の道路ではなかなか分からないことだが。ローラーという不自然な均一さの上で運動することで明確に意識させられる。

 普通に生活しているような道路は、車道か歩道かにかかわらず真っ直ぐでまっ平らな道はない。陸上競技場ならともかく、生活道路はそもそも水がたまらないように傾斜がつけてあるし、マンホール、植え込みのブロック、道路の出入り口の段差、舗装の継ぎ目や穴、工事跡、街路樹の根、凸凹のコンクリート等が次々に現れる。普段は無意識にそれらを避けたり踏み越えたりして歩いたり走ったりしている。真っすぐに歩く機会はないし、微調整しながら歩くのが普通過ぎて真っすぐ歩けていないことに気づきもしない。

 トレッドミルは外界のノイズがないので、真っ直ぐ歩いたり走ったりできないことは自分ができていないことがはっきり分かる。うすうす感じてはいたが、トレッドミルに乗ってみるとこれを突きつけられる。4km/hのウォーキングですら時々左右に足がブレる。このブレが膝の痛みに繋がっているのではないかと思っている。

 ヒップアダクションで内転筋と外転筋を鍛えれば軽減されるかと期待したが、あまり関係ないようだ。それより、バランス能力を鍛えるしかないのだろう。

トレッドミル走法

 トレッドミルで一番合理的で楽な走りは、自分が目指すものではなく、着地位置を前にしてカカトで着地し、ベルトの動きに合わせて力を使わずに足を後ろに振るような「走り方」だ。ジムで他の人の走りを見えいると、馴れいている人はそのような走りをしている。少し重心を下げ気味にして上体を直立させ、足を振り子のように振るのだ。これは、推進力に当たる部分をベルトが肩代わりしているからできる走り方だ。

 しかし、このような練習をしていたのでは外では通用しない。前に振り出した足のカカトで着地したら、自分の脚力で前に重心を持っていく必要がある。着地位置が前になればなるほどこの乗り越える負担は大きくなる。推進力となるのは重心が着地した足より前に行ってからだ。滞空時間が短く接地時間が長いのもこのフォームの特徴だ。この走りはジムに行く前から、社宅の近所で走っている高齢ランナーのフォームとして見ていた。「なんか、独特の低いフォームで競歩みたいやな」と思ってみていた。普段トレッドミルでトレーニングしている人がマラソンが近くなったときに外を走るようになったのではないだろうか。

 本来、脚力のない高齢者ほど合理的な省エネフォームを身につけるべきだ。でないと故障の原因になるし、ゴールまでたどり着けなくなる。せっかく、時間と金と体力を使ってジムに行っても、悪いフォームを身につけるのでは意味がない(自分が通っているジムではランニングのアドバイスは受けられないのが残念だが)。


 この動画は同じ人のトレーニング前(左)と後だが、わかりやすい。左はトレッドミル走法に近いが、実際にはもっと重心が低く上下動がない。因みに右の動画のような走りが自分の目指すものだが、このように膝を曲げた状態で着地することはできない。

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