流行りもの通信簿 154 フォンブロックス

phoneblock 流行りモノ通信簿 154回で「フォンブロックス」を紹介していて興味を持った。検索したらGIGAZINEに「スマートフォンで必要な機能だけを選んで自分好みに完全カスタマイズ可能な「Phonebloks」 – GIGAZINE」という記事があった。

 基本的な理念には賛同するが、問題は大きく重い故障がちで割高な端末をどれだけの人が買うかだ。

 このように機能毎に物理的なパーツを組み合わせるためには物理的に統一された汎用の高機能なインターフェースがすべてのパーツに必要になる。その先に何が接続されるか分からないからだ。モノコック(従来の専用設計端末)なら、全ての要素が最適に配置され重複するパーツなど存在しない。だから今の大きさ・重さ・価格で今の機能・性能が作られるのだ。

 一つ一つの要素は単体で完結した物理的なパッケージングがされている。本体(ベースとなるパーツ)と中身の間には二重の壁が必要になるということだ。モノコックなら全く必要のないこの壁の分、重量と厚さは増える。しかも、それらの仕切りは端末の機能・性能に何ら貢献しない移動のためのケースにすぎない。そんなものを常時持ち歩くことが合理的とは思えない。

 処理速度が必要な要素はひとかたまりのパーツにするしかないのではないだろうか。Soc(CPU,GPU,メモリコントローラ)、メインメモリ、通信チップなどだ。これらのどれかを交換したかったら端末全部と大差のない価格になってしまうのではないだろうか。

 また、モノコックで作りこんだ端末では不要なインターフェースを通すことは電気的なノイズ対策を追加しなければならなくなったり、電力消費を増やすだろう。

 また、カメラの性能が欲しければカメラのパーツだけグレードアップすればいいといった説明があったが、カメラの性能はCPU、GPUやメモリ、メモリ帯域とも密接に関わっている。カメラの性能を上げるためにはCPU周りもグレードアップしないと使い物にならない。結局、従来の端末を買い換えるのと大差のない金額がかかりかねない。同じことは液晶の解像度にもいえる。高解像度の液晶をドライブするためには最新のプロセッサとメモリが必要なのだ。モノコックの端末はそれらをすべて克服する組み合わせでパッケージングされているのだ。

 また、新しいパーツを取り付けた時のドライバのアップデートをどうするのか。モノコック端末は新しいハードウェアを搭載した機種には当然、それに対応したドライバをインストールしたOSがプリインストールされて出荷される。しかし、ユーザが後で出荷時と異なるハードウェア構成にした時にOSやドライバをどうするのかは問題になるのではないだろうか。

 自分は気にしないが、モジュラー型にしたら防水は期待できなくなるだろう。電池のスペースも減るだろうから電池の持ちが悪くなるか分厚くて重い電池をつけるかしなければならなくなる。

 これらは端末自体への疑問だが、ホントはもっと大きなハードルがある。価格だ。デジタルデバイスはスケールメリットが大きい。性能の高低にかかわらず作るのにかかるコストは大差はない。性能の違うものを作るより高性能なものを大量に作ったほうがトータルとして安くできることが多い。高機能で最新の iPhone 5s のカメラですらパーツの納入予想価格は$13しかしない。これを iPhone 4S レベルのものにしたからといって半分にもならないだろう。

 また、デバイスを作るにはイニシャルコストがかかる。モジュラーパーツを作るにはケースとインターフェースが必要だ。これらは中に入る機能部品のグレードとは関係なく同額だ。組み込むモジュールのグレードによる差をさらに縮めてしまった上に割高になる。

 「2013年10月29日、Phonebloksプロジェクトは世界に新風を巻き起こす」ということなので、続報を待ちたい。自分的には2013年ベーパーウェア候補ナンバーワンだ。

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