E Ink、四半期ベースの営業利益は昨年比46%の落ち込み。出荷台数も昨年並みとの予測

 目が疲れにくいこと、電池の持ちが良いこと、価格が安いことの3つが電子ペーパーのメリットだったが、目が疲れくいこと以外のメリットは7インチクラスのタブレットに完全に消された。

 電池の持ちについては、スマートフォンと一緒だ。丸一日安心して使えれば、それが2日だろうが3日だろうがあまり関係はない。まして、タブレットの使い方を考えれば現行の7インチでも毎日充電しなければならない人はほとんどいないだろう。重要なのは「充電できない状況で電池が切れるか切れないか」だ。そして、電子書籍端末は電池が切れたからといって支障をきたすことが殆ど無いことを考えれば、「充電が1ヶ月に一回でいい」ことはそれほど大きなアドバンテージではないことに、タブレットが普及することでばれてしまった。

 価格についても、Kindle fire と NEXUS 7 以降、タブレットとしても十分使える端末が数千円の価格差に来てしまった。タブレット端末としても使えることを考えれば、コストパフォーマンスはタブレットに軍配が上がるだろう。

 そして、この記事にも書かれている通り、タブレットの使用が普及によりバッグのスペースが圧迫されたことも大きいだろう。

E Ink、四半期ベースの営業利益は昨年比46%の落ち込み。出荷台数も昨年並みとの予測 | TechCrunch Japan

KindleやSony ReaderといったE-reader(電子書籍リーダー)は5年前に登場してきたものだ。しかし既にその存在を危うくしつつあるようだ。ディスプレイメーカーのE Ink Holdingsの発表によると、四半期毎の営業利益は昨年比で48%の落ち込みとなり純損失が3360万ドルになったとのことだ。純損失を計上するのは初めてではないが、この4年間で最大規模となっている。また、2013年におけるE-readerの売り上げは1000万台から1500万台になりそうだとのことで、これは昨年とほぼ同様で既に成長傾向にないということが注目に値する。

E Inkの売り上げのうち、70%が電子ペーパー型ディスプレイからのもの。そしてそのほとんどはe-reader用となっている。電子ペーパーは消費電力が少なく、目に優しいというメリットがある。リフレッシュ速度が遅く、また白黒表示しかできないが、それでもE-readerやスマートウォッチなどの特定用途に向いているものだとして市場に受け入れられてきた。

今季の売り上げが伸びていない理由のひとつとして、E-readerのアップグレード時期にあたっているからだとする考えもある。つまり、需要の低下は季節変動要因によるものだという考えだ。しかしシェアのかなりの部分を占めるAmazonのKindleのアップデートは9月のイベント時期に行われており、今期の需要低下を時期的に当然のことであると結論付けるのは難しそうだ。

E Inkはホリデーシーズンになれば売り上げも伸びるはずだと強気の姿勢もみせている。しかし同時にE-readerへの依存度合いを減じたいとも考えている様子だ。また売り上げが伸びるかどうかは、アジアおよびロシアにおけるディスプレイ需要が伸びるのかどうかに強く依存しているという状況だ。

地域的にみれば、電子ペーパーの需要が伸びるところもあるのだろう。しかし全体的に考えれば、将来はさほど明るいものでもないように思える。北米および欧州での売り上げもE Inkが期待するほどのものにはなっていないようだ。E-reader以外にも7インチの格安タブレットが登場してきており、E-readerを選択する理由はなくなりつつあるのかもしれない。たとえばKindle Fireは159ドルだし、Nexus 7も269ドルという低めの価格設定となっている。

確かにE-readerに比べれば、タブレットによる電子書籍読書は快適さの面で劣るものかもしれない。しかし複数のデバイスを持ち歩くというのは、非常に負担になることでもある。E-readerというのは確かに一部の利用者からは絶対的な支持を集めるデバイスではある。しかし、そうした層に行き渡ってしまったとき、さらなる発展というのが望みにくいデバイスでもあるのだ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です